#4 小さな平和
2020/3/14 @カントリーブラン→農志塾
春の訪れを感じる土曜の朝に市外のパン屋へ車をはしらせた。
ひょんなことから、十勝中のパン屋を巡る理由ができたからだ。それも一年以内に。
“濃厚接触”とかいうなんともねちっこい言葉を流行らせたアレのせいで、パン屋にも変化があるそうだ。
それは、包装。
ビニールに閉じ込められて、個包装されているらしい。たしかにパン好きの人からしたら興ざめなんだろうな。
ブルーベリージャムの甘酸っぱさを、最後のひと口のコーヒーで流し込もうとしたとき、男の子とお母さんが入ってきた。
「塩パンほしい?」
「うん。ほしい。」
「ほんとうにすきね。」
自分がこの子の歳のころはチョココロネ一択だったので驚いた。さすがとかちっ子。
包装されず、テカテカの塩パンは見るからに美味しそう。この子がきょうもサクフワの食感を愉しめるのは、ビニールがないから。
これだけ世間をさわがせているアレだが、男の子にとっての小さな平和は守られていた。
このギリギリの境界線はあり続けてほしい。